世界を舞台に活躍する次世代のリーダーを育てる
「先生、分かった! 前に進む時間をもっと増やせばいいんだね」と目を輝かせ、パソコンに向かう子。「次は左に進みたいから、逆方向に回転させてみよう」とロボットの動きを何度も確認する子。教室は夢中で作業をする子どもたちの活気にあふれている。
株式会社ロボット科学教育(本部:川崎市麻生区上麻生)が運営するCrefus(クレファス)新百合ヶ丘校には、年長から高校2年生までの約200人が在籍。ロボット製作を通じ高度な理数系の知識を習得している。「レゴ®社などが開発した世界標準のロボット教材を使用しますが、カリキュラムは独自のものです。知識の詰め込みではなく、子どもたちの好奇心を引き出し、楽しみながら学べる内容が特長です」と足立寛幸常務取締役副社長。年長から低学年は幅広い興味を持てるよう動物・宇宙・地理などを題材に、世界地図やブロックを使い教科を横断した内容で、プログラミングは小学1年生から始まる。3年生からはロボット製作の基礎となる構造や仕組み、パソコンを用いたプログラミングの基礎を学び、中学生になるとセンサーの制御方法や通信のメカニズムなどを習得する。「手を動かし自分で答えを導き出すことが大切。最初から公式や答えを与えなくても、子どもたちはいつの間にか難しい原理原則を体得し、問題解決に必要な知識が足りないと思えば自ら学ぶようになります」と足立副社長。また、カリキュラムは学校の指導を先取りした内容も多く、Crefusで一度体験したことを学校で改めて学ぶため、理解がさらに深まる仕組みだという。
子どもたちは世界最大規模のロボット競技会「FLL(ファースト・レゴ®・リーグ)」にも積極的に参加している。今年新百合ヶ丘校から参加したチームは地方大会、全国大会を勝ち抜き、5月に米国カリフォルニアで開かれた世界大会へ出場。ロボット競技部門で参加68チーム中1位に輝いた。大会では英語でのプレゼンテーションも必要となる。上位入賞のため英語の辞書を使って勉強したり、チームワークの大切さに気付いたりと、ロボット製作技術以外にも得ることが多い。「大会中に海外の友達をつくり、帰国後SNSを通して連絡を取り合う子もいます。世界との垣根を乗り越えていく姿にはたくましさも感じます」と成長に目を細める。
同社は2003年に創業、現在はフランチャイズも含め全国で130教室を展開する。創業当初は、ロボット製作を通し理数系の知識を楽しみながら学ぶという考え方が珍しく、「楽しみながら学ぶことができるのか」「プログラミングを学んでも将来役に立たないのでは」という声もあったという。しかし、2020年の小学校のプログラミング教育必修化が決まり、「STEM(ステム)教育:Science(科学) 、Technology(技術)、Engineering (工学)、Mathematics(数学)を総称する教育モデル」の必要性が言われるようになると、教育現場や保護者からの反応は大きく変わった。また、修了生がVR(バーチャルリアリティ)を利用したスポーツ観戦システムを開発し「2018年ものづくり日本大賞」内閣総理大臣賞を受賞。このような教え子の活躍により、独自のカリキュラムにも注目が集まっている。足立副社長は「プログラミング技術だけでなく、理数分野の論理的思考や問題解決能力はますます重要になります。その中で、国際的なイニシアチブをとれる人材の育成を目指しています」と目標を掲げる。
新百合ヶ丘は時代に即した教育への関心が高く、同社の教育理念にもマッチした地域だという。今後、地域イベントへの参加や体験授業を通し、多くの子どもたちにロボット製作や理数分野の魅力に触れてもらえる場を提供したいという同社。目の前に立ちはだかる壁を自分の力で乗り越え、未来へ世界へと羽ばたく子どもたちを輩出していくことだろう。
《プロフィール》
足立 寛幸 (あだち ひろゆき)
1980年7月29日生まれ。私立大学工学部卒業後ゼネコンに入社し、内装デザイン制作や現場責任者、営業に従事。2006年、教育理念や仕事内容に魅力を感じ株式会社ロボット科学教育に入社。6教室の教室長、エリア長などを務め、2018年4月に常務取締役副社長就任。執行役員教育戦略部部長も兼任し、全直営教室の統括や社員採用面接、新入社員研修に携わる。「教え子たちが成長する姿を見ること、会いに来てくれること」が一番の喜び。