11月5日、川崎西税務署にて山田貢さん(川崎市麻生区岡上在住、農業生産法人 株式会社カルナエスト 代表取締役)への果実酒製造免許の交付式が行われました。山田さんのワイナリーはこの免許を取得したことにより、川崎市内および神奈川県内で、果実の栽培から醸造までを行うワイナリーの第1号となりました。
川崎市では、今年3月に多摩区・麻生区・宮前区が「かわさきそだちワイン特区」(以下、特区)に認定されたばかり。酒税法により、通常はワインなどの果実酒の製造免許の条件として、年間6,000リットル以上(ワイン1本750ミリリットルと換算して約8,000本分)が最低製造数量基準として定められていますが、特区に認定されている地域ではその条件が暖和されます。特定農業者(農家民宿や農家レストランを営む農業者)は、特区内に所在する自己の酒類製造場で自ら生産した果実を使った果実酒を製造する場合、最低製造数量基準を満たしていなくても、他の条件を満たせば製造免許を受けることができます。ただし、その他の条件は特区外と同じなので、製造免許取得はそう容易なことではありません。醸造する施設を含めさまざまな審査や手続きがあり、醸造経験などの技術面も問われます。
「ワイナリーは、地域就農者を増やしたり、農業の視点を変えたり、農業の仕組みを新しくしたいという思いで取り組んでいます。地域活性化のためには地域で栽培した果実だけでワインを作れた方がいい。そのために特区内醸造を実現させたいと思いました」。2020年に特区が認定されたら、2020年度内に製造免許を取得してワインを作りたいと宣言していた山田さん。12月には醸造を開始して、早ければ春には経営する飲食店「Lilly’s by promety(リリーズ・バイ・プロメティ)」(川崎市麻生区万福寺1-12-19 鈴木ビル1-E)などで完成したワインを提供できる見込みで、自らの宣言を見事に成し遂げることになりそうです。
ブドウ畑の広さは約30アール。岡上に遊びに来た人たちには本物に触れてほしいという思いから、ピノ・ノワール、シャルドネ、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロなど、世界にも通用する品種のブドウを栽培しています。山田さんは2017年に作ったブドウで、2018年に川崎市内初となる自家栽培ブドウ100%のワイン「川崎 蔵邸ワイン 岡上ロゼ」を完成させましたが、醸造は東京都内のワイナリーで行っていました。その直後、2018年10月に酒税法の改正があり、ブドウの生産地と醸造地が同じでなければラベルに地名を明記できなくなったため、そのワインは「最初で最後の川崎ワイン」と呼ばれることに。「新たなワインを作るときには、あの時のワインを復刻させたくて。ピノ・ノワールをメインとした大人っぽい、濃いめのルビー色のロゼを作りたいと思っています」。特区に認定されて製造免許を取得した今、山田さんはまた「川崎」の冠付きのワインを作ることもできるようになりました。川崎市民にとっても夢のある話です。「ワインと出会い、自分が農業に持っているイメージも少し変わってきました。初めて農業には夢があると思わせてくれたワインに、感謝しています。だからしっかりとワインづくりを行っていきたい。そして、農業がより夢のある職業になるように、仕組みづくりに取り組んでいきたいと思います」
※昨年8月、山田さんは「NPO法人 岡上アグリ・リゾート」を設立しました。そこでは農業体験を通じて仲間と一緒に農業や食、自然のことを学び、地域の繋がりをつくり、地域資源を次世代に伝えるための活動を行っています。また、活動の一環として、これまでに培ってきた農業の6次産業化のノウハウなどを生かして、農業全般についてのコンサルティングの相談窓口も開設しています。詳細は下記WEBサイトをご覧ください。
[INFORMATION]
●農業生産法人 株式会社 カルナエスト
URL:http://carnaest.jp/
●NPO法人 岡上アグリ・リゾート
URL:https://www.okagami-agri.jp/
情報提供:地域情報メディア「MYTOWN」