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概要

しんゆり人 NO.003 2019 SUMMER

 農作物が育つのに必要な水と肥料。これらをAI(人工知能)やIoT(Internet of Things:モノのインターネット)を用いて自動制御する最新の農業システムが、新百合ヶ丘で開発されている。これまで経験や勘が頼りだった「ベテランの技」をICT(情報通信技術)が補強することで、収穫量のアップや作業の効率化を可能にする。この最新技術は人と農業をつなぎ、後継者不足に悩む農業を変える新たな一手となりそうだ。 「ICT技術はこれからの農業を担う大きな力になります」。熱のこもった口調で語るのは、株式会社ルートレック・ネットワークスの佐々木伸一代表取締役社長。同社はハウス栽培の作物に水や肥料を与える際、独自のアルゴリズム(AI)によって最適な量やタイミングを計算して供給できるシステムを開発し、注目を集めるベンチャー企業だ。このシステム「ゼロアグリ」は、土壌の水分量や日射量、肥料の濃度などを数値にして「見える化」水と肥料を自動で供給し収量を増やすI C T を活用し農業の変革を目指す株式会社ルートレック・ネットワークス02これからの農業にかける熱い思いを語ってくれた株式会社ルートレック・ネットワークスの佐々木伸一代表取締役社長。受付には、第4 回日本ベンチャー大賞「農業ベンチャー賞(農林水産大臣賞)」(2018 年)の受賞や、第11 回「川崎ものづくりブランド」(2014 年)の認定の際に受け取ったトロフィーや楯が並ぶ。するだけでなく、作物の成長に合わせた最適な水分量を供給することができる。そのため、品質の安定化や収量の増加が見込め、作業時間を削減することが可能だ。 1台で約70アール(7000平方メートル/トマトの場合)を管理できる画期的なシステムだが、2013年の販売時には農家の反応はあまり良くなかったという。佐々木社長は「水やり10年という言葉があるほど、農業は長年の経験や勘を大切にします。機械が人の代わりをすることは難しいという印象が強かったのだと思います」と振り返る。しかしその後、東日本大震災の復興事業などに関わる中で認知度が上がり、技術への信頼も高まっていった。「ゼロアグリ」は現在、国内29道府県をはじめタイ、ベトナム、上海などの海外にも進出し、約150か所で使用されている。AI やクラウドを灌水や施肥に活用した「ゼロアグリ」本体。01connect byTechnology人と農業をつなぐ 都市農業ムーブメントしんゆり人 NO. 003 2019 SUMMER 6