ブックタイトルしんゆり人 NO.001 2018 WINTER

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概要

しんゆり人 NO.001 2018 WINTER

 同研究室はアスパラガスの栽培以外でも、さまざまな研究成果をあげている。ミニトマトの「ソバージュ栽培」もその一つ。「ソバージュ」とは野性的という意味で、逆U字型の支柱を立てトマトの茎を引き込んだ後は、茎や葉が伸びるのに任せておくという栽培方法だ。設備にかかる費用が少なくてすむうえに栽培管理が楽で、出荷量が少なくなる真夏にも生産が可能になるなど、さまざまなメリットがある。トマトは国内で最も売上が多い野菜とあって注目度が高く、「ソバージュ栽培」は東北地方を中心に全国各地で普及が進む。「私は専業農家の出身なので、できるだけ手間をかけずに収量を増やしたいという生産者の気持ちがよく分かります」と元木准教授。長野県の農業試験場に勤務していた経験もあり、生産現場の実態をよく知る。従来の栽培法にとらわれない新しい発想には、このときの経験が生かされている。だからこそ研究室では「生産現場直結型の研究」をモットーにし、学生たちにも現場に出て生産者との触れ合いを大切にするよう指導する。大学の研究室としては珍しく、大学に生産者や行政関係者、流通業者などを招いたセミナーを年3、4回開催するのも、この一環。研究の成果を体験してもらい、そこで出た意見や感想を基に改良を加えることで、研究の精度を上げている。「研究の成果を目の当たりにできることが農業の面白さ」「生産現場直結型」の研究がモットー生産者と共に農業の現場を支える 同研究室には元木准教授のほか、学部生、院生が17人在籍している。「夏休みには勉強のため秋田、広島、鹿児島など全国10か所ほどを回りました」と話すのは、学部4年の加藤綾夏さん。高校2年のとき、農業ボランティアに参加したことで農業に興味を持った。「生産者と近い距離で、生産に役立つ研究がしてみたい」と、この研究室に入るために大学を受験したというほど、研究にかける思いは強い。大学院生の田口 巧さんはアスパラガスの生態に魅了され、「採りっきり栽培」の収穫量向上のために研究を続けている。「元々植物が好きだったこともありますが、作物が育っていく過程や、研究の成果を目の当たりにできることが、農業の面白さだと感じます」と生き生きとした表情で語る。 研究室が活気にあふれている一方で、日本国内の野菜摂取量は年々減少し、農家の高齢化や担い手不足も避けられない問題になっている。また近年は異常気象の影響を受けることも多く、新たな栽培法の研究開発が必要性を増している。「農業を活性化させるためのアプローチはさまざまですが、私たちは生産者のそばにいて、すぐに役立つような研究をしていきたい」と話す元木准教授。学生たちと全国各地を飛び回り、生産者の声に耳を傾け農業の現場を支えている。03. ミニトマトの「ソバージュ栽培」はできるだけ茎や葉の手入れをせずに、自然に任せて育てるのが特徴。トンネルのように茂り、内側に果実ができる。04. 麻生区黒川地区で9 月に開かれた「採りっきり栽培」の勉強会。生産者たちが元木准教授から栽培管理の注意点についてアドバイスを受けた。農業を学ぶ面白さについて笑顔で語る学生たち。研究室では生産現場から流通までを視野に入れ、それぞれが自分の興味あるテーマを見つけ研究にあたっている。030413 しんゆり人 NO. 001 2018 WINTER