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概要

しんゆり人 NO.002 2019 SPRING

 狂言は室町時代に成立した伝統芸能の一つ。能舞台の上で能と共に演じられ、大がかりな舞台装置は用いず、言葉や仕草によって全てを表現する。『源氏物語』『平家物語』などを題材に人間の悲劇性を描く能とは対照的に、狂言は庶民の日常や人間の本質を鋭く切り取り、「笑い」にくるんで演じる。能楽は江戸時代、徳川幕府の式楽(公的な儀式の場で上演される芸能)であったが、大蔵流の山本家はその伝統を今も重んじ、時代の流行に惑わされることなく芸の伝承に努める。四世・山本東次郎さんは2012年に重要無形文化財各個指定(人間国宝)に認定され、東京・杉並能楽堂を拠点に公演や普及活動を行っている。 その東次郎さんが、2009年の第1回から10年続けて出演しているアルテリッカしんゆり。今年も5月3日?に、同じく人間国宝でシテ方喜多流の友枝昭世さんと一緒に「能と狂言人間国宝の競演」に出演する。 東次郎さんにとって、新百合ヶ丘の舞台は「ホームのような場所」だという。「お客様が毎年のように来てなじんホームのようなしんゆりで代々大切にしてきた『月見座頭』を上演 観客への信頼が厚いこの舞台で今回上演するのは、山本家が大事に受け継いできた『月見座頭』。この曲の主人公は座頭(目の不自由な男)で、中秋の名月の夜、目は見えずともこの夜を楽しもうと虫の声に耳を傾けていると、それに目を留めた通りがかりの男が話しかけ、二人は和やかに酒を酌み交わす。ひとときを共に楽しむが、男にいたずら心が持ち上がり…という、人間の心を鋭く突いた名曲だ。「我が家の芸風にも合っているので、代々大切にしてきた演目。祖父が初めてラジオ出演したときにこの曲を演じ、父もここぞという時に披露していました」と特別な思いを寄せる。また、元々は大蔵流のみで演じられてきた曲で、山本家では主人公の「座頭」が教養のある見識の深い人物であると解釈し、身分の位を上げ「勾当(こうとう)」の姿で演じる。「狂川崎・しんゆり芸術祭 アルテリッカしんゆり慢心が一番の敵 初心を忘れず演じたい大蔵流狂言方・人間国宝 山本 東次郎 さん02でくださっているので、安心して舞台に立つことができます。先入観にとらわれずに受け取っていただくことができる場所です」と笑顔で語る。大蔵流狂言方・山本家に伝存されてきた能舞台、杉並能楽堂にて。同能楽堂は1910 年に本郷弓町に建てられ、関東大震災後、1929 年に現在の杉並区和田に移築再建された。都内では靖国神社の芝能楽堂に次いで2 番目に古く、2012 年に杉並区指定登録文化財に指定された。5月3日? 能と狂言 人間国宝の競演  友枝昭世と山本東次郎の至芸 出演しんゆり人 NO. 002 2019 SPRING 8